カートを変えたら買い物客の来店頻度を13.8%向上させたスーパーマーケット、その理由は?

【PR】本記事は日本マイクロソフト株式会社のスポンサードコンテンツです。また、本記事はLedge.aiからの転載記事です。

スマートショッピングカートを導入した店舗では、利用客の来店回数を増やす結果を得られました。そして、スマートショッピングカートの利用客は、過半数が50代以上の方で、そのなかでもシニアの方の利用率は非常に高いです――。

こう語るのは、スーパーマーケット事業を手掛けるトライアルグループの技術開発を主導する株式会社Retail AI 代表取締役社長・永田洋幸氏だ。Retail AIは、トライアルホールディングスのグループ会社として2018年に設立され、小売りや流通業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に取り組んでいる。

今後急速に普及していきそうなスマートショッピングカートは、小売り業界に何をもたらしてくれるのか。永田氏に話を聞いた。


株式会社Retail AI 永田氏

セルフレジでの買い物は「時間がかかる」

スマートショッピングカートとは、「トライアル」の店舗で利用できる、タブレットとバーコードリーダーを搭載したセルフレジ機能付きの買い物カートである。トライアル専用のプリペイドカードをスキャンすることでカートを使用できるようになり、利用客は商品のバーコードをスキャンしながら買い物が可能だ。

スマートショッピングカートのセルフレジ機能は、専用ゲートを通過する際にプリペイドカードのチャージ額からお買い上げ額が引かれる仕組み。そのため、レジ待ちや従業員と接触せずキャッシュレスで決済が完了する。

すでにスマートショッピングカートはトライアルの35店舗でおよそ3400台が稼働している(2021年3月末現在)。

最近ではセルフレジを導入する店舗も増えているが、スマートショッピングカートは何が違うのか。永田氏は「スマートショッピングカートのほうがセルフレジよりも決済に関する時間を大幅に短くできる」と話す。

―― 永田氏
「昨今の情勢としても、有人レジを減らしたり、避けたりする動きがあります。そこで注目されているのがセルフレジですよね。ただ、セルフレジは、利用客自身が会計時に商品をまとめてスキャンする必要があるため、レジでの滞在時間が長くなっていたのです。

結果的に、セルフレジを使うために『待つ』という状況も発生していました。

一方、スマートショッピングカートであれば、売場での買い物中に商品スキャンが済んでいるため、セルフレジに比べて決済時間が短縮され、ストレスを軽減可能です。また、決済時間を短くすることで、必然的に店舗への滞在時間の短縮にも貢献しています」


※SSC=スマートショッピングカートの略

決済時間の短縮といえば、大手アパレルメーカーで利用されている「RFIDタグ」なども存在するが、食品などの商品においてはコスト面がネックになると永田氏は言う。

―― 永田氏
「食品などにおいては、単価が安く設定されているものも多いため、RFIDタグの導入コストを転嫁すると、個々の商品の販売価格が大幅に変わる懸念があります。そのため、既存のバーコードを使う仕組みのほうが商品自体への価格に影響を与えない特徴があります。

もちろん、RFIDタグ自体は非常に便利なソリューションなので、商品カテゴリーや価格帯によっては採用が適切な場合があると思います」

商品を購入した人に対する販促活動もカートが担う

そしてスマートショッピングカートには、決済機能だけでなく、世界初とうたう機能が搭載されている。それがショッパーマーケティング機能だ。

スマートショッピングカートは、利用客がカートに入れた商品(=購入した商品)を時系列で把握できるようになっている。商品の購入履歴やプリペイドカードに登録された属性(性・年代)をもとに、スマートショッピングカートに搭載しているタブレット端末にクーポンやおすすめ商品をレコメンドするのがショッパーマーケティング機能なのである。

―― 永田氏
「私たちのスマートショッピングカートは、クーポン配布といった、商品を購入する人に対する販売促進活動の役割も担っています。

たとえば、カートに『じゃがいも』『にんじん』『お肉』を入れた場合、カートに搭載しているタブレット端末に『カレールー』のクーポンや広告を表示する、といった販促が可能です。

もちろん、カートに入れた商品をもとにクーポンを配布するため、最初に『お肉』しか入れていない場合だと、ビールのクーポンが出る場合もございます。ただ、クーポン配布は、メーカー様と一緒に『どのようなお客様に、どのような買い物体験をさせたいのか』を見える化していくので、クーポンを出し分ける制御も可能です」

ショッパーマーケティング機能を使えば、過去の購買履歴から「酒類を一切購入しない人には、お酒に関する商品のクーポンは発行しない」といったことも可能とのことだ。

利用者が「楽」できるソリューションは年齢問わず使われる

すでにスマートショッピングカートを導入した店舗では、客が来店する回数を増やした事例があると永田氏は話す。

―― 永田氏
「福岡県にある『スーパーセンタートライアル アイランドシティ店』など複数の店舗でスマートショッピングカートを導入したところ、来店頻度が平均して13.8%向上しました。この頻度向上を分かりやすく言えば、これまで月に4回来店されていたお客様が5回来店いただけるようになったということです。

小売り店では、来店回数を増やすことが売り上げを増やすことにもつながるため、来店頻度の向上は非常に大きな意味があると感じています。

スマートショッピングカートが実現する、「非対面・接触低減の買い物体験」が、コロナ禍においてお客様に“安心感”を提供できたのではないかと考えています」

ここで気になるのは、スーパーマーケットを主に利用する方々……とくにシニアの方にとって、スマートショッピングカートというソリューションは「とっつきにくい」モノではないのか、という点だ。

しかし、スマートショッピングカートの利用者の年代構成を聞くと、驚くような答えを聞かされた。

―― 永田氏
「スマートショッピングカートの利用者年代構成を見てみると、過半数が50代以上の方なんです。60代以上が利用者全体の36%であり、シニアの方にも多く使っていただいていることがわかっています。

私個人の見解ですが、年々、デジタルサービス利用のハードルは間違いなく下がっていると思うんです。それこそ、スマートフォンやタブレットが普及したため、シニアの方もなじみやすくなっていると思います。

そして何より、買い物客自身が抱えていたレジ待ちやセルフレジへのストレスなどを軽減できるため、スマートショッピングカートを使えば『楽をして買い物できる』と知ってもらえたのでしょう。一度でも楽できる体験をしてしまえば、年齢関係なく活用してくれています」


※2021年3月18日現在

人件費に悩む小売り店、品出し人員確保のジレンマを解決

スマートショッピングカートの恩恵を受けるのは利用客だけではない。導入する店舗側にも大きなメリットがある。

スーパーマーケットをはじめとする小売業で、もっとも費用がかさむのは人件費だ。店頭業務だけに絞って考えても、レジ打ち業務や品出し業務を来店客にストレスを与えずに遂行しなければいけない。しかし、人件費が潤沢な店舗は多くなく、最低限の人員で店舗運営をしているケースがほとんどだ。

この状況に対して、永田氏は次のように話す。

―― 永田氏
「スマートショッピングカートの構想初期からあった話ですが、従業員はレジ業務ではなく、できるだけ品出し業務に注力してもらえるように考えていました。来店客に店舗自体の利用率を上げてもらうためには、『欲しい商品が確実にある』という状態を作らないといけません。

ですが、各小売り店においては人件費が潤沢でなかったり、人員の確保が難しかったりとさまざまな課題を抱えています。そこで、スマートショッピングカートを活用いただくことで、レジ業務への人員を減らし、品出し業務に注力してもらうようにしました。

私たちの店舗でも、欠品がなくなったわけではありませんが、大きく改善へと向かっています。スマートショッピングカートだけでなく、トライアルグループが開発した『リテールAIカメラ』も併用することで、商品棚を観察し、売り場の最適化に寄与できるような取り組みも進めています」

「私たちが目指しているのは、『One to Oneマーケティング』」

さらに永田氏は「これまでの小売り店では、来店客の行動を追えていなかった」と続ける。

―― 永田氏
「データを活用するマーケティングは、ここ数年非常に重要だと多くの業界で言われてきていますよね。ただ、スーパーマーケットのような小売り店では、DXをはじめとするデジタル活用はまだまだ進んでいるとは言えません。

私たちが目指しているのは、『One to Oneマーケティング』です。来店客それぞれが買い物体験に最大限満足してもらうためにも必要な取り組みだと思っています。それこそ、スキャンした商品から新たな商品をレコメンドしてくれるのは便利な買い物体験でしょう。そして、満足される来店客が増えれば、おのずと店舗の売り上げも良くなり、他の業界と比べて企業数が多い小売り業界全体への影響も、非常に大きくなります。

スマートショッピングカートに備わっているショッパーマーケティング機能は、小売り店における商品を購入する人たちに対するデータを活用した販促活動の第一歩として、新たな買い物体験を提供できるようになっています」

このスマートショッピングカートに備わっている ショッパーマーケティング機能をより進展させるため、2021年1月末からリテールAI研究会は「スマートショッピングカートデータを用いた分析コンペ」を開催した。本コンペは、新たな併売パターンの発見や、個人ごとの購買予測モデル構築、また最終的に構築したレコメンドモデルをカート実機に展開することを目指した内容となっている。

次回の記事では、この分析コンペティションについて、運営協力をした日本マイクロソフト株式会社およびatma株式会社に話を聞く。

レジカート分析コンペの裏側に迫る全3回の短期集中連載

一般社団法人リテールAI研究会は2021年1月末から開催した「スマートショッピングカートデータを用いた分析コンペ」の裏側に迫るため、Ledge.aiでは全3回の記事で本コンペのキーパーソンにインタビュー取材を実施しているので合わせて読んでほしい。

第1回:
カートを変えたら買い物客の来店頻度を13.8%向上させたスーパーマーケット、その理由は?
https://ledge.ai/regi-cart-competition-vol1/
「スマートショッピングカートは、小売り業界に何をもたらしてくれるのか」を中心に、トライアル社のスマートショッピングカートについて、トライアルグループの技術開発を主導する株式会社Retail AI 代表取締役社長・永田氏に話を聞いた。

第2回:
「1週間程度のコンペ期間で1000万円級のモデルが生まれた」レジカート分析コンペの裏側をマイクロソフト、atmaが語る
https://ledge.ai/regi-cart-competition-vol2/
レジカートでの分析コンペを運営したマイクロソフト・樋口氏、atma・山口氏にコンペ全体を振り返ってもらいつつ、本コンペならではの「おもしろさ」や「魅力的だったこと」を話してもらった。

第3回:
小売り業界でのデータ活用は多くの人の「人生」に影響を与える
https://ledge.ai/regi-cart-competition-vol3/
なぜ小売り業界はDXが進まないのか――。この課題に対して、株式会社Retail AI 代表取締役社長・永田氏とリテールAI研究会・今村氏は「何をすればいいのかすらわかっていない状態」だという。